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2008年05月25日

「ダーウィンの悪夢」

 第78回アカデミー賞のベスト・ドキュメンタリー・フィルムにノミネートされるなど世界中の映画祭で高い評価を受けた米国ドキュメンタリー映画「ダーウィンの悪夢」(2004年。フーベルト・ザウパー監督)をレンタルで見ました。

 アフリカのヴィクトリア湖はかつて、多様な生物が棲む「生態系の宝庫」でした。しかし、約半世紀前に放流されたたった一匹の外来肉食魚ナイルパーチがほかの魚を駆逐し増殖していきます。加工された魚はヨーロッパや日本などへ大量に毎日空輸されます。湖畔ではそれに伴い、この外来魚の一大産業が発展し、そして、人々の生活に大きな影響を与えます。

 まちには貧富の差が生じ、ストリートチルドレン、売春、エイズ、犯罪がはびこるようになります。武器輸出に絡む動き、生態系の破壊、そして、外国へは良い食材を輸出しながらまちの人々はその残骸を非衛生的な状態で食べています。「大国が弱小国を、強者が弱者を食い殺していく」という悪夢の連鎖がドミノ倒しのように起こっていったのです。タイトルが「ダーウィンの悪夢」となっているのはそういう理由です。

 大学在学中か卒業直後、マレーシアからの留学生の薦めで「エビと日本人」( http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%83%93%E3%81%A8%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%9D%91%E4%BA%95-%E5%90%89%E6%95%AC/dp/4004300207 )という本を読んだことがあります。あらから20年以上が経ちました。マレーシアの暮らしは全体として若干良くなったかもしれません。しかし、「貧しい」発展途上国が「豊かな」先進国の食卓を支え、「弱い」発展途上国が「強い」北の資本主義国に食い荒らされているという「南北問題」の基本的な構造は全く変わっていません。

 日本では、ナイルパーチは味噌漬けや白身フライの材料として外食産業や給食用に広く使われているといいます。在タンザニア欧州委員会(EU)の代表がヴィクトリア湖畔のまちを訪れた時、彼らは胸を張りこう言ったそうです。「私達がタンザニアの水産加工インフラを整備した」。

 この映画のフーベルト・ザウパー監督は言います。「この死のシステムに参加している個々の人間は悪人面をしていないし多くは悪気がない。その中には、あなたも私も含まれている。職務をただ果たしている(ナイルパーチや武器を運ぶ)パイロットもいれば、真実に目をそむける人、ひたすら生き残るために闘っている人もいる。登場人物は、みな実在の人物であり、この現代のシステムの複雑さと現実の不可解さを象徴している。彼らを私達人類を映す鏡だと私は思う。グローバル化された人類のジレンマという問題を」(「Jan Jan News」( http://www.news.janjan.jp/culture/0609/0609240680/1.php )より)。

 ビクトリア湖はもともと、「ダーウィンの箱庭」と呼ばれていたそうです。


Posted by 吉田 康人 at 14:07│Comments(0)
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